ユンボにまたがって

聴いた音楽の感想等々

Counterparts 「You're Not You Anymore」

カナダ出身の5人組のハードコア系バンドによる5作目。

 

静かな幕開けから爆発的なパワーに溢れている「Bouquet」で始まる。畳み掛けるような勢いとパワーで突き進んでいく。ボーカルとブリッジミュートを刻んでいるギターと同時に哀愁漂うフレーズを弾いているギターが鳴っている。またただ速いだけでなく「Thieves」のように重い曲もあり様々な要素を取り入れていることがわかる。クローザーは表題曲の「You're Not You Anymore」は複雑な刻みだったり緩急がついていたりと内容が盛り沢山な一曲となっているがダレることなく聴き手を惹きつける楽曲である。全体的に演奏面でもただただ激しいの一辺倒になっておらず、サビのメロディはポップである。しかも、曲自体はポップになり過ぎることはなくハードコアやメタルの熱さや激しさをしっかりと残し、メタルコアやポストハードコアなど様々なジャンルを吸収しつつバランスを上手くとっている。12曲でわずか28分というアッという間に疾走していく。

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8.4/10.0

Friendship 「Hatred」

千葉出身のハードコア系バンドによる2017年発表の1stフルアルバム。

 

相変わらず大型トラックの如く重低音を撒き散らしながら圧倒的なパワーで爆走している。特にドラムは人力の限界に挑んでいるような高速で耳を破壊しにかかる爆裂ビートである。そのためテンポがダウンするとメリハリがあって実際のテンポ以上に遅く感じるほどである。初っ端の「Rejected」から超高速ドラムとフィードバックノイズが鼓膜を破壊し、テンポダウンでガッチリと掴んでくる。ただ高速というだけでなく編集盤に収録されてる曲同様ドゥームメタルのような要素もあり、一見相反するような二つを上手く組み合わせており、一概にただのハードコアとは言い難い新しいジャンルである。激しい入りが印象的な「Grief」や「Execution」では濁流のようなイントロのリフから歌が始まると鉄砲水のように一気に溢れてくるなど様々な魅せ方がある。12曲で25分と密度が高いアルバムで、編集盤同様に妥協の無い低音とフィードバックノイズの激しい楽曲が間断なく続いて、全てを押し流す爆音の作品となっており、編集盤よりもまとまっていて聴き手を一挙に攻めたててくる凶悪な暴力アルバム。

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8.3/10.0

GLIM SPANKY 「BIZARRE CARNIVAL」

2017年発表の3作目のアルバム。

 

ジャケットからしてサイケデリックな感じが強めではあるで楽曲もサイケな曲が多いアルバムとなっている。特に二曲目の表題曲の「BIZARRE CARNIVAL」はThe Beatlesの「Lucy In The Sky With A Diamond」を彷彿とさせるサイケなサウンドである。また歌詞の面でも「The Trip」ではルーシーなどの人名が出てきたりするなど曲名にあるようにトリップしている感じがある。しかしそれでも基調となるロックンロールやブルース色は失ってはいない。「吹き抜く風のように」や「ビートニクス」では強いメッセージとともにロックをしている楽曲である。クローザーの「アイスタンドアローン」は壮大なイントロと荒々しい歪みが印象的でサイケとロックを上手く融合させた楽曲である。これといったキラーチューンは無いが全体を通してまとまっている。従来のロックンロール色より今作ではThe Beatlesのようなサイケデリック色が強く出ているがただのサイケではなく、GLIM SPANKYらしさがあるサイケな楽曲に陶酔する。

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7.7/10.0

Periphery 「Juggernaut:Omega」

Alphaの対となる3rdアルバムOmega。こっちが4枚目のアルバムとなっている。

 

Alphaと同様1曲目は違和感を覚えるが2曲目の「The Bad Thing」はミドルテンポで複雑な重低音の効いたリフが揺さぶってくる曲となっている。また「Graveless」ではカオティックハードコアのようなアグレッシブさとDjentの刻みとヘヴィさが同居している。「Hell Below」では前半のミドルテンポでヘヴィな楽器陣と叫び続けるボーカルで成り立っていて後半突如お洒落な展開になるプログレッシブな曲。そして表題曲「Omega」は11分半を超える長作となっている。階段を駆け上がるようなリフで始まり、ヘヴィな雰囲気から突然オシャレな雰囲気になったり、そこからまたヘヴィになったりなどなど何度も様々な展開を見せる詰め込みまくりな曲である。エモ系統のメロディからヘヴィなアウトロで曲を終える。クローザーの「Strange Thing」はエモ系統のメロディとDjentな楽器陣というPeriphery Ⅲに繋がる曲である。対をなすAlpha同様なエモ系統からのアプローチが見られるが、Omegaの方がAlphaよりプログレッシブでヘヴィかつDjentな曲が多い。

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7.2/10.0

Periphery 「Juggernaut:Alpha」

2015年発表の3rdアルバム群。AlphaとOmegaの二部作となっている。Alphaが3枚目のアルバムとなっている。

 

1曲目の「A Black Minute」からなんだこれは度肝を抜く展開。まさかのDjentの成分が皆無の普通の楽曲。しかしそんな心配とは裏腹に2曲目の「MK Ultra」では重低音の複雑なリフが暴れまくる曲となっており、しかも曲の後半は謎の展開をみせ次の曲へと繋がる。表題曲の「Alpha」は変拍子の上に覚えやすいメロディを乗っけた変態じみた曲である。しかもコンパクトな曲なのに2部構成にしている点などプログレ的要素も踏まえているようである。「22 Faces」の複雑な刻むリフと走り回るギターはいかにもといった感じがある。全体的にはエモ寄りのキャッチャーなメロディが多い。しかしわけのわからない変拍子と複雑な刻むリフは健在である。アルバムを通して凡そ40分とコンパクトにまとまっているため、沢山楽曲を詰め込んでいるから聴いていると疲れたり飽きるといったようなことは少ない。エモを消化しきれてないような中途半端な印象がある。Periphery Ⅲへの過渡期的アルバム。

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6.9/10.0

 

Friendship 「Ⅰ&Ⅱ」

アメリカのSentient Ruinから2017年にリリースされた千葉県出身のハードコアバンドのFriendshipによる今まで出した音源の編集盤。

 

初っ端から終わりまで音の暴力といった楽曲が続く。オープニングは「Jerusalem」でわずか30秒ほどで音の洪水を巻き起こしながら疾走していく。「T.R.Ø.Y」は遅いテンポでフィードバックノイズを中心とした暗黒の世界といった容貌のドゥーミーな楽曲である。途中噴火するかのように突如暴力的な疾走する演奏へと変貌を遂げ、またドゥーミーになるという目まぐるしい楽曲である。またジャズピアニストの名前を冠した「Bill Evans」も全くジャズらしさの欠片もなく破壊的な演奏で音が塊となって押し寄せてくる。わずか39秒で脅威の構成を魅せる「Low」はハードコアを体現している。クローザーの「El Chapo」は比較的遅めのテンポで最後まで一貫して暴力を振るい幕を閉じる。ビートで踊らせる気もサラサラなく、ブレイクダウンというよりはもはやドローン系まで行ってしまうテンポになるので暴れることもできない。音楽にノって云々というのは一切できないストイックさを感じることができるほど重低音とノイズによる音の洪水が起きている。Suicide SilenceのMitch Luckerを彷彿とさせるようなボーカルでクリーンな声は一切なく、全体を通してバンド自体が歪んだ重低音の暴力である。曲はハードコアを基調としているからか短く、アルバム自体も12曲収録されていながら26分という短さである。ジャケットのギロチンに象徴されるような暴力性に富む、というか富み過ぎなアルバム。

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7.5/10.0

FINLANDS 「Paper」

女性2人組による2016年発表の1stフルアルバム。

 

メンバーは塩入冬湖(Gt.Vo)とコシミズカヨ(Ba.Cho)で、サポートメンバーを加えてバンド形態でやっている。高音域でもファルセットを使わないので高音域でのキリキリとした声音が曲にエモーショナルさを加えている。オープニングの「ウィークエンド」は曲の初っ端からその声が聞くことができる。特に「バラード」という楽曲ではエモーショナルで激しく、かなり限界近くまで喉を振り絞っているような咽び泣くような声である。この切実で迫ってくる声で好みが分かれてしまうかもしれない。ベースは決して目立つようなフレーズやテクニックを披露することは無いけれど要所要所の盛り上げていくところで存在感を発揮している。特に「メリーゴーラウンド」では印象的なベースのフレーズがある。またしっとりとした曲でのベースの存在感が印象的である。「Hello Tonight」や「月にロケット」はボーカルも優しい声で、「メリーゴーラウンド」では可愛らしく歌っていて幅の広さを感じる。アルバムも激しい楽曲から始まり数曲畳み掛けるように暴れると落ち着いた楽曲に自然に移行し、激しくなってアルバムを終えるのでまとまりがある構成である。なんでもバンドのコンセプトが冬らしくてコートを着てライブするらしいのでライブ見てみたい。

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8.5/10.0