ユンボにまたがって

聴いた音楽の感想等々

Veil Of Maya 「False Idol」

イリノイ出身の4人組による2年ぶりの6作目。

 

低音で激しくかつ複雑なリフと構成が特徴であるDjentシーンで活躍するVoMであるが今作でも健在である。短い導入部を終えて初っ端の3曲から激しく複雑なリフで畳み掛ける。その激しさの一方でクリーンボイスではPeripheryがみせたようなエモ的なメロディが目立っており、エモ・スクリーモへのアプローチが見てとれる。また、「Pool Spray」ではスラッジ的な遅さと重さがある始まりから爽やかさがあるサビへと移行していく前衛的な曲なのだが不自然さがない巧みな楽曲である。また「Manichee」ではザクザクとした刻みや激しく複雑なドラムであるがボーカルは始めから終わりまでクリーンで歌うという完全にエモへのアプローチがみられる。全体的にボーカルのクリーンパートのメロディがシンガロングできるくらいポップかつ郷愁的なところがかなりある。後半ではマシンガンのような高速ドラムと激しいスクリームが聴ける「Follow Me」といった極悪な楽曲も揃っている。後半の「Follow Me」「Tyrant」「Livestorm」の凶悪なボーカルと激しい楽器隊の演奏が楽しめる。序盤はDjentとエモの間くらい、中盤ではエモ、後半は激しさが強めとアルバム全体で激しい楽曲と落ち着いた楽曲と緩急がつけてあって流れができていてぶっ通して聴ける。

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7.4/10.0

米津玄師 「Bootleg」

2017年発表の4枚目のアルバム。

 

タイアップ曲などで先に発表されていた曲が多く寄せ集め感が出て散らかったような印象かと思いきやそんなことはなく一つ一つが存在感を発揮しつつも一つの大きな流れとしてまとまりのあるアルバムとなっている。「海賊版」という題名だが、オリジナリティが無いというわけではなく、様々なジャンルからの影響を感じさせつつも消化してオリジナルのものへと昇華している。オープニングの「飛燕」は軽快で爽やかなギターで始まり耳に馴染むサビが心地よく、まさしく大空が眼に浮かぶようである。そこから「Loser」ではファンキーなブレイクビーツのアッパーチューンとなっている。「砂の惑星」では縦横無尽に暴れるがベースが邪魔にならないうまくバランスをとって存在感を発揮している。「Moonlight」はアンビエントのような雰囲気と実験的なボーカルが朧げで浮遊感をもたらしている。「打ち上げ花火」ではどこか懐かしいようなメロディが印象的である。またクローザーで菅田将暉とのコラボの「灰色と青」も目玉の一つであろう。全体的に隙間なく音が詰め込まれているが息苦しくはなく、濃密ではあるけれども聴いていてもあまり疲れないようなバランスがとれている。

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7.6/10.0

Beck 「Colors」

2017年発表の13枚目のアルバム。

 

Beckもまた昨今の流行であるダンスポップ的アルバムを制作したようである。全体的に様々な楽器で音を隙間なく詰め込んだ印象があるものの、爽やかで鬱陶しさはない。しかしただのダンスポップのアルバムではなくいろいろな要素がある点がやっぱりBeckだ!と再確認させる。特に「I'm So Free」の強いビートや焦燥感のあるサビ前のメロディに見られるただの踊れる音楽ではなく変態さも兼ね備えているオルタナ的な楽曲である。またジャズのようなピアノのイントロやファジーなギターリフそしてメランコリーなメロディがクセになる「Dear Life」もただのポップソングでなく、Beckの様々な要素を混ぜた鍋のようなイメージそのままである。特に「Wow」の奇妙な楽器の音色やコーラスを交えながらもポップであるという不思議な変態な楽曲である。もはやオルタナといった枠に収まらないようである。アルバム名の通り、カラフルな印象を感じるアルバムである。ただ少し爽やか過ぎて変態的な要素が薄めな気もするがこれ以上変態要素を加えるとこの丁度良さが失われてしまうのかも。あっさりとしつつもコクのあるアルバムだと思う。

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7.7/10.0

If Anything Happens To The Cat 「Mangata」

ベルギー産ポストロックバンドによる2017年発表の2枚目のアルバム。

 

アンビエントやAmerican Footballのようなエモ的要素を含んでいるポストロックバンドである。オープニングの「Lakesides, Endless」は悲しげなアルペジオが主体となって浮遊感のある幕開けとなっている。時間をかけて徐々に展開し盛り上げていき、後半のエモーショナルなギターリフと雰囲気に圧倒される。また8分半を超える長尺曲の「Echo Park」は独特の世界観がある。ボーカルが幾人も重なっていており奥行きがある。また後半の展開も劇的で、前半の浮遊感を踏襲しつつ、遠くで鳴っている音がいきなり目の前にあらわれ、郷愁的で儚げなボーカルが揺さぶってくる。8分半を超えるとは思えない楽曲で、無重力空間を漂っているような気持ちになるほどの浮遊感がある。また「Five Lion Mountain」では浮遊感がありつつ轟音系ポストロックのように厚みのある演奏と、マス系のような早弾きが魅力的である。7曲44分とコンパクトにまとまっており、ジャケットにあるような宇宙空間を漂うような気持ちになる。またアルバムのタイトルの「Mangata」もスウェーデン語で「水面に映る道のような月明かり」という意味で、幻想的な宇宙空間の雰囲気がタイトルやジャケット、そして楽曲から伝わってくる。

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7.4/10.0

Joy Opposites 「Find Hell」

2017年発表の2枚目。

 

日本のオルタナシーンで活躍する彼らの今作はホステスからのリリースである。激しくもありつつも全体的に洗練されシンプルでありながら奥深さがある。初っ端の「Blond Dogs」から悲しげなアルペジオと熱量を感じるリフのイントロで惹きつけられる。静と動を使い分けた90年代を彷彿とさせつつもよりソリッドでシンプルさを追求しているようである。またMVが公開されている「Gold Blood」はシンプルでパワフルなイントロと曲の頭から始まる歌とそのメロディが力強く殴ってくる。様々な楽器が入っているが彩りを添える程度であってごちゃごちゃしたような印象は無く、寧ろシンプルな雰囲気がある。続く「Sleep」もポップなメロディであり、リズムも体を揺らしながら聴けるような心地よさがある。さらにクライマックスへ持っていく緊張感も心地よく感じる。「Pretty Much」はダークな雰囲気とエモ的なメロディが歌声を引き立てている。クローザーの「Good Luck」は静かな入りからの盛り上がりのメリハリが印象的である。クライマックスへいく途中の変拍子のようなリフもソリッドである。ポップなメロディでありつつも根源的なところでは90年代オルタナシーンへの回帰を見せつつもそれを咀嚼し消化しオリジナルを見せている。聴けば聴くほど彼らの進化を感じる。

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8.0/10.0

Celeste 「Infidèle(s)」

フランスのリヨン出身のダークハードコアバンドによる2017年発表の6枚目のアルバム。

 

ダークハードコアってなんだって感じであるがとりあえずダークな世界観のハードコアらしい。とにかくひたすら叫び続けるのであるがハードコア特有の破壊しながらの疾走感はあまりなく、重たい沈み込んでいく印象がある。サウンドは轟音系ポストロックのように厚みがありつつ歪んだギターサウンドと奥底から鳴り響くベース、疾走感よりも重厚感があり激しくありつつ緩急のあるドラム、そして暴力的なボーカルの声で成り立っている。オープニングを飾る「Cette chute brutale」からドス黒い塊がじわりじわりと押し寄せてくる印象がある。ハードコア系といっても「Tes amours noirs illusoires」や「Sombres sont tes déboires」、「(I)」などは5,6分をゆうに超える曲で、ギターサウンドの轟音感や曲の構成において静と動のつけかたなどポストロック、ポストメタルの要素が感じられる。個人的にはハードコアよりも細かいブリッジミュートの刻みやらもろもろからメタル寄りのアルバムだと思う。

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6.5/10.0

Converge 「The Dusk In Us」

アメリカボストンにて1990年結成、マスコアの雄であるConvergeの2017年発表の9枚目のアルバム。

 

日本ではカオティックハードコアといった方が馴染みが深いであろう彼らの今作も激しく暴れまわっている。巧みに緩急を使い分け、変拍子変拍子と思わせないような曲の構成である。常に叫びがなり続けるボーカルと激しく歪みノイズ寸前のギター、唸るベース、そしてその全てを支えるパワフルなドラムが今作でも聴ける。ハイテンションなリフで幕を開ける「A Single Tear」は叙情系のような印象もありつつ脳を揺さぶるカオスさがある。初っ端からずっとハイテンションで暴れ続ける彼らであるが、突如表題曲の「The Dusk In Us」になると暗く鬱々としたメロディと歌詞の曲となる。「dusk」は夕暮れということであるが夕焼けといったような印象はなく、黄昏のようなこの世とあの世の狭間といった印象をもつ。次の「Wildlife」になると何事も無かったかのようなハイテンションで脳がシャッフルされる。またシンプルなギターリフと唸るベースでほぼ構成されている「Trigger」も印象的である。表題曲の「The Dusk In Us」と後半の「Thousands of Miles Between Us」以外ほぼ全編ハイテンションで暴れながら駆け抜けていくものの歌詞は悲痛さがありつつ前を向くようなアルバム。

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8.5/10.0