ユンボにまたがって

聴いた音楽の感想等々

Sleep 「The Sciences」

2018年の初っ端に初来日を果たし、地下に潜るドゥーム・ストーナーファンを狂喜乱舞させた大御所Sleepが最後の作品となっていたDopesmoker以来となる15年ぶり(完全な新作としては19年ぶり)となる復活作。アルバムの公開日は世界マリファナデーでもある4月20日と凝っている。Sleep's Holy MountainやDopesmokerを土台にしつつもさらに強靭で低音の効いた轟音の低速リフが延々と繰り返され、今まで以上に遥か彼方を目指しているといったような仕上がりである。聖なる山やエルサレムを目指していた彼らはジャケットにあるかの如く宇宙へと飛び出していったアルバムである。

アルバムのオープニングを飾るのは「The Sciences」というおよそ3分の短い(?)ギターのインストで幕を開ける。そこから唐突に唸りを上げる楽器陣が鼓膜を揺さぶってくる「Marijuanaut's Theme」はDopesmokerのような音の壁によるリフとOMを彷彿とさせるような呪術的なぶつくさと唱えるボーカルが癖になる。そこから畳みかけるようにDopesmokerの完全版に収録されている12分超の大作である「Sonic Titan」へと続いてゆく。さらにそこから単音リフで幕を開ける14分超の「Antarcticans Thawed」へと続てゆく。ひたすら地を這うかの如く続くシンプルで単調なリフが聴き手を宇宙へと連れていく。そして彼らの音楽性の原点といえるBlack Sabbathのベーシストであるギーザー・バトラーの名前を冠した「Giza Butler」はその名に恥じない印象的なベースリフで幕を開け、洪水のようなギターリフが襲ってくる。特に最後の部分の盛り上がり方と激しさは白眉である。そしてアルバムぼ終曲である「The Botanist」は侘しさが漂う、まるで漆黒の宇宙空間に一人でいるかのような寂しさと静けさが轟音の中にあるエンディングに相応しいインストナンバーである。ただ終わり方が若干不完全燃焼気味である。

わずか6曲であるが53分という長いのか短いのかよくわからないアルバムであるが確実にエルサレムよりはるか彼方へ連れていかれ、尚且つ聴きやすいアルバム。

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8.5/10.0