ユンボにまたがって

聴いた音楽の感想等々

Spotlights 「Seismic」

ニューヨークの夫婦による2017年発表のアルバム。

 

Mogwaiの如く分厚い音の壁を構築しているような感じである。ただうねるような低音のギターやアグレッシブなドラムからポストメタルのような雰囲気が感じられる。ただボーカルはIsisなどと違って普通の歌声である。オープニングはアルバムタイトルと同名の「Seismic」で、浮遊感のある始まりから急激にメタリックなサウンドへと変貌する。轟音の中で単一リフの如く繰り返されるボーカルがさらなる浮遊感をもたらしている。そして間断なく次の「Learn to Breathe」へと繋がる。シューゲイザーのように轟音の中でゆったりとしたメロディが流れるがドラムはパワフルで弦楽器の音も非常に重たい。またリフも地を這うようなものである。この中で歌われるメロディが楽器隊と上手く対比されるような関係で非常に浮遊感のあるものとなっている。更に間断なく次の「The Size of the Planet」そして「Ghost of a Growing Forest」へと一曲のように繋がるようすはまるでプログレのようである。「What is This? Where Are We?」ではメリハリのある展開がある良曲である。ポストメタルとシューゲイザーを融合したようなアルバムとなっており全般轟音といったアルバムである。ただ全体で約64分もあり、同じ雰囲気がずっと続くため後半になると疲れてきてしまった。

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7.2/10.0

Amenra 「Mass VI」

1999年結成、ベルギーのコルトレイク産激情系ポストメタルバンドの6枚目のアルバム。

 

Isisのアーロン・ターナーはポストメタルを「thinking man's metal」と形容したがまさしく今作は思考する人間のメタルである。ひたすら真っ暗闇で前が見えないような音と悲痛なボーカルの叫びのような歌声が更に黒を黒たらしめている。今作のオープニングを飾る「Children of the Eye」は物静かな暗闇を想起させる暗いイントロが2分近く続いた後、一気にボーカルとギター、ベース、ドラムが爆発するように入ってくる。重厚なサウンドと同じリフを繰り返すのであるがそこから展開し、一筋の光がさすような優しい声のパートが一瞬ある。しかしそれすらも覆い尽くすほどの暗黒な演奏がまた始まる。初っ端から10分近くある長尺な曲であるが一瞬たりともダレることはない。「Plus Près de Toi」も長尺な曲ではあるが静と動があり、あっという間に終わってしまうような感覚がある。なんと言っても「A Solitary Reign」は優しく語りかけるボーカルとそのバックで轟音を奏でている楽器隊とそれとともに渦巻きながらリフの一部と化したかのような絶叫が印象的な珠玉の作品である。そしてクローザーの「Diaken」は11分超の楽曲である。これもまた激情的なボーカルとポストロック、ポストメタルのような音の壁が出現する楽曲である。決して疾走感があるわけではなく、どちらかと言えば遅さ、重さに比重があり、ノロノロと進んでいくのであるが痛みを表現した圧倒的な空気感に飲まれ一瞬のうちに全曲聴き通してしまうほどの熱量がある。約40分が一瞬にして過ぎ去る怪作。

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8.2/10.0

Veil Of Maya 「False Idol」

イリノイ出身の4人組による2年ぶりの6作目。

 

低音で激しくかつ複雑なリフと構成が特徴であるDjentシーンで活躍するVoMであるが今作でも健在である。短い導入部を終えて初っ端の3曲から激しく複雑なリフで畳み掛ける。その激しさの一方でクリーンボイスではPeripheryがみせたようなエモ的なメロディが目立っており、エモ・スクリーモへのアプローチが見てとれる。また、「Pool Spray」ではスラッジ的な遅さと重さがある始まりから爽やかさがあるサビへと移行していく前衛的な曲なのだが不自然さがない巧みな楽曲である。また「Manichee」ではザクザクとした刻みや激しく複雑なドラムであるがボーカルは始めから終わりまでクリーンで歌うという完全にエモへのアプローチがみられる。全体的にボーカルのクリーンパートのメロディがシンガロングできるくらいポップかつ郷愁的なところがかなりある。後半ではマシンガンのような高速ドラムと激しいスクリームが聴ける「Follow Me」といった極悪な楽曲も揃っている。後半の「Follow Me」「Tyrant」「Livestorm」の凶悪なボーカルと激しい楽器隊の演奏が楽しめる。序盤はDjentとエモの間くらい、中盤ではエモ、後半は激しさが強めとアルバム全体で激しい楽曲と落ち着いた楽曲と緩急がつけてあって流れができていてぶっ通して聴ける。

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7.4/10.0

米津玄師 「Bootleg」

2017年発表の4枚目のアルバム。

 

タイアップ曲などで先に発表されていた曲が多く寄せ集め感が出て散らかったような印象かと思いきやそんなことはなく一つ一つが存在感を発揮しつつも一つの大きな流れとしてまとまりのあるアルバムとなっている。「海賊版」という題名だが、オリジナリティが無いというわけではなく、様々なジャンルからの影響を感じさせつつも消化してオリジナルのものへと昇華している。オープニングの「飛燕」は軽快で爽やかなギターで始まり耳に馴染むサビが心地よく、まさしく大空が眼に浮かぶようである。そこから「Loser」ではファンキーなブレイクビーツのアッパーチューンとなっている。「砂の惑星」では縦横無尽に暴れるがベースが邪魔にならないうまくバランスをとって存在感を発揮している。「Moonlight」はアンビエントのような雰囲気と実験的なボーカルが朧げで浮遊感をもたらしている。「打ち上げ花火」ではどこか懐かしいようなメロディが印象的である。またクローザーで菅田将暉とのコラボの「灰色と青」も目玉の一つであろう。全体的に隙間なく音が詰め込まれているが息苦しくはなく、濃密ではあるけれども聴いていてもあまり疲れないようなバランスがとれている。

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7.6/10.0

Beck 「Colors」

2017年発表の13枚目のアルバム。

 

Beckもまた昨今の流行であるダンスポップ的アルバムを制作したようである。全体的に様々な楽器で音を隙間なく詰め込んだ印象があるものの、爽やかで鬱陶しさはない。しかしただのダンスポップのアルバムではなくいろいろな要素がある点がやっぱりBeckだ!と再確認させる。特に「I'm So Free」の強いビートや焦燥感のあるサビ前のメロディに見られるただの踊れる音楽ではなく変態さも兼ね備えているオルタナ的な楽曲である。またジャズのようなピアノのイントロやファジーなギターリフそしてメランコリーなメロディがクセになる「Dear Life」もただのポップソングでなく、Beckの様々な要素を混ぜた鍋のようなイメージそのままである。特に「Wow」の奇妙な楽器の音色やコーラスを交えながらもポップであるという不思議な変態な楽曲である。もはやオルタナといった枠に収まらないようである。アルバム名の通り、カラフルな印象を感じるアルバムである。ただ少し爽やか過ぎて変態的な要素が薄めな気もするがこれ以上変態要素を加えるとこの丁度良さが失われてしまうのかも。あっさりとしつつもコクのあるアルバムだと思う。

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7.7/10.0

If Anything Happens To The Cat 「Mangata」

ベルギー産ポストロックバンドによる2017年発表の2枚目のアルバム。

 

アンビエントやAmerican Footballのようなエモ的要素を含んでいるポストロックバンドである。オープニングの「Lakesides, Endless」は悲しげなアルペジオが主体となって浮遊感のある幕開けとなっている。時間をかけて徐々に展開し盛り上げていき、後半のエモーショナルなギターリフと雰囲気に圧倒される。また8分半を超える長尺曲の「Echo Park」は独特の世界観がある。ボーカルが幾人も重なっていており奥行きがある。また後半の展開も劇的で、前半の浮遊感を踏襲しつつ、遠くで鳴っている音がいきなり目の前にあらわれ、郷愁的で儚げなボーカルが揺さぶってくる。8分半を超えるとは思えない楽曲で、無重力空間を漂っているような気持ちになるほどの浮遊感がある。また「Five Lion Mountain」では浮遊感がありつつ轟音系ポストロックのように厚みのある演奏と、マス系のような早弾きが魅力的である。7曲44分とコンパクトにまとまっており、ジャケットにあるような宇宙空間を漂うような気持ちになる。またアルバムのタイトルの「Mangata」もスウェーデン語で「水面に映る道のような月明かり」という意味で、幻想的な宇宙空間の雰囲気がタイトルやジャケット、そして楽曲から伝わってくる。

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7.4/10.0

Joy Opposites 「Find Hell」

2017年発表の2枚目。

 

日本のオルタナシーンで活躍する彼らの今作はホステスからのリリースである。激しくもありつつも全体的に洗練されシンプルでありながら奥深さがある。初っ端の「Blond Dogs」から悲しげなアルペジオと熱量を感じるリフのイントロで惹きつけられる。静と動を使い分けた90年代を彷彿とさせつつもよりソリッドでシンプルさを追求しているようである。またMVが公開されている「Gold Blood」はシンプルでパワフルなイントロと曲の頭から始まる歌とそのメロディが力強く殴ってくる。様々な楽器が入っているが彩りを添える程度であってごちゃごちゃしたような印象は無く、寧ろシンプルな雰囲気がある。続く「Sleep」もポップなメロディであり、リズムも体を揺らしながら聴けるような心地よさがある。さらにクライマックスへ持っていく緊張感も心地よく感じる。「Pretty Much」はダークな雰囲気とエモ的なメロディが歌声を引き立てている。クローザーの「Good Luck」は静かな入りからの盛り上がりのメリハリが印象的である。クライマックスへいく途中の変拍子のようなリフもソリッドである。ポップなメロディでありつつも根源的なところでは90年代オルタナシーンへの回帰を見せつつもそれを咀嚼し消化しオリジナルを見せている。聴けば聴くほど彼らの進化を感じる。

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8.4/10.0