ユンボにまたがって

聴いた音楽の感想等々

The National 「Sleep Well Beast」

2017年発表の7作目のアルバム。

 

優しいバリトンボイスとゆったりとずっと同じビートを刻み続ける「Nobody Else Will Be There」から始まる。それから一転しアップテンポな「Day I Die」。物騒なタイトルとは裏腹にエネルギッシュなギターリフが高揚感をもたらす。しかし歌詞はもの悲しげな歌詞となっている。渋みのあるバリトンボイスのボーカルの声とどっしりとした楽器陣の安定した演奏。メロディやリフにポップさがある反面、不可思議な電子音やノイズといった実験的要素が散りばめられている。「Turtleneck」ではちょっと変えれば邪魔にしかならなそうなギターが歌をうまい具合に引き立てている。そういった邪魔になりそうな要素さえも上手く目立たせず隠し味、雑味のような効果をもたらしている。他にもコーラスなどで壮大なサウンドに奥行きや立体感を出している。各紙で前作を上回る大作と言われているがまさにその通りの出来のアルバムである。

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8.7/10.0

Nothing But Thieves 「Broken Machine」

イギリス出身5人組の2017年発表の2作目のアルバム。

 

タイトなドラムとベース、荘厳なメロディを朗々と歌い上げるオープニングの「I Was Just a Kid」で幕を開ける。「Amsterdam」ではエモーショナルに力強く歌っている。表題曲の「Broken Machine」は最初はベースとドラムがメインで、徐々に音が増えていくエレクトロな楽曲である。また「Sorry」や「Soda」のように歌声をしっかり聴かせてくる曲もある。「I'm Not Made By Design」では売りの一つであるファルセットをこれでもかと堪能でき、それに応えるかの如くエモーショナルなギターソロが印象に残る楽曲となっている。リフを中心とした楽曲は少ないようだが「Get Better」ではロックなリフを聴かせてくれる。コーラスのかかった煌びやかなギターサウンドとMuseのような荘厳で緩急がついてサビで爆発する曲の展開、そして力強くかつどこか寂しげな優しい歌声が押し寄せてくる。キーボードやアコギなどを使い広がりのある空間を作り出している。激しい演奏ではないが熱量のある。アコギで聴かせる曲から踊れる曲まであり、緩急とバリエーションに富んだアルバムとなってる。

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7.9/10.0

Stray From The Path 「Only Death Is Real」

2017年発表の8作目のアルバム。

 

RATMがいない今、Prophets of Rageとともにロック界の最左翼に分類されること間違いないなしのこのバンド。トランプ大統領になってから激しさを増したような感じがある。特に「Goodnight Alt-Right (おやすみネトウヨ)」はイントロのとぐろを巻くようなベースリフと攻撃的なボーカルと後半の暴力的なパートが殴りかかってくる。この曲、アルバム発売前からMVがYouTubeにアップされてるのだが謎の低評価の炎上の嵐が巷で起きている。多少グロいMVではある。それとシングルとして発売されていた「The House Always Wins」もゲストボーカルを迎えて新録され収録されている。この曲のシングル版のMVもなかなかアメリカ大統領選を皮肉っている内容となっている。この新録も低音のボーカルを迎えたことで迫力が増している。全体的には従来通りのNu-Metalにハードコアの疾走感、メタルコアのようなブレイク、パンクの要素、そしてDjentのような手の込んだリフとマス的な複雑な構成を増し増しで詰め込んだサウンドとなっている。ギターのエフェクティブなサウンドは鳴りを潜め、楽曲を引き立たせる複雑なリフに徹しているように思える。しかし怒りに満ちた怒鳴るボーカルと激しくかつテクニカルなドラムと太いベースは健在である。破壊力と音の暴力が一同に会した保守化に向かう世界に一石を投じる政治色もサウンドとしても最左翼に属する一枚。

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7.8/10.0

 

Cloud Nothings 「Life Without Sound」

オハイオの4人組の2017年発表の4作目のアルバム。

 

 切ないイントロの「Up to the Surface」で幕を開ける。琴線を震わせるエモい声でアルバムのスタートを決める。「Modern Act」は軽快なメロディとサウンド、そして沈痛で悲痛な、だけど背中を押してくれるような歌詞は「Stay Useless」に通じるようなまさしくクラナシといった感じの曲である。一方でWeezerのようなパワーポップっぽさをクラナシ流にした「Internal World」といった曲もある。寂寞として思わずグッとくるメロディから思わず拳を上げたくなるエモーショナルなメロディまである。シャウト気味のボーカルもエモーショナルでノイジーなギターと合致している。ジャケットの海のように楽曲たちはおおらかで爽やかに駆け抜けていくけどその一方でその大きさの裏にある寂しさや悲しさも同時に思い起こさせる1枚。これをエモいと言わずして何をエモいと言うのか。エモいという言葉がしっくりくることこの上ないアルバム。

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8.5/10.0

Royal Blood 「How Did We Get So Dark?」

イギリス出身の2人組の2枚目のフルアルバム。

 

ベースとドラムというシンプルな編成であるがヘヴィかつエッジの効いたサウンドを出している。一曲目の「How Did We Get So Dark」から印象的なリフとノリやすいメロディで幕を開ける。ベースとドラムとシンプルな編成であるため「I Only Lie When I Love You」ではカウベルやタンバリンなどドラムが陰ながら大活躍する曲のようである。また「Where Are You Now?」では行進するようなリフから這うようなリフへと変化するパンチのあるものだった。「Hook, Line & Sinker」は怒濤のリフから始まり、サビでは本当にベースなのかという音を出してリフを弾いている。ベースとドラムだけでなくキーボードがある楽曲も一部あり、しかもそのキーボードも大々的に参加する訳ではなくサウンドに広がりを持たせる役割を果たしている。基本的にはベースとドラムで成り立っているパワフルな1枚。

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8.3/10.0

Mogwai 「Every Country's Sun」

2017年発表の9作目のスタジオアルバム。

 

初っ端の「Coolverine」から相変わらずのエモくかつ荘厳で轟音のサウンドで始まる。「Brain Sweeties」でみせる雄大で地平線を眺めるようなサウンドはまさしくMogwaiといった感じがある。電子音を混ぜた「Crossing the Road Material」はポップなサウンドとなっており聴きやすい楽曲の一つである。自動小銃みたいな名前の「Aka 47」や「1000 Foot Face」の浮遊感のあるサウンドはMogwaiの唯一無二のものだと思う。浮遊感のある曲が続くがラスト三曲というところでいつもの轟音で揺さぶってくる曲になる。「Battered At a Scramble」ではエモーショナルな荒れ狂うギターが響き、「Old Poisons」では轟音のリフが洪水のように溢れてくる。そしてクローザーの表題曲「Every Country's Sun」で切ないメロディと心地よいノイズが壮大な世界観を呈して終える。粒の荒い歪んだギターも時に激しくなるドラムもエモーショナルなメロディなど轟音系ポストロックのお手本のようである。ジャケットも曲もMogwaiのいいところを詰めたアルバム。

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8.5/10.0

Heaven In Her Arms 「白暈」

日本の5人組ポストハードコアバンドの2017年発表のおよそ7年ぶり3枚目の「はくうん」と読むアルバム。

 

Convergeの曲名からバンド名をとったと思われるこのバンド。Convergeほどのカオティックはないがトリプルギター編成の途轍もない破壊力を四方八方にぶっ放している。envyのような逼迫感溢れるボーカルとMONOが持ち合わせている楽器陣の壮大さと悲壮感を合わせ再構築したイメージというのが一番わかりやすいかもしれない。「月虹と深潭」では激動と静寂のコントラストが絶妙であり、疾風怒濤の激烈なサウンドから一転してクリーントーンの繊細なアルペジオがさらなる深淵へと誘う。3本のギターが織り成す想像以上の立体感がこのアルバムの目玉かもしれない。3本のギターがそれぞれお互いを邪魔せずに分かれていて奥行きと広がりをもたらしている。「赦された投身」では地を這うようなリフと怒濤のトレモロピッキングが聴き手を圧倒する。最終曲の「幻霧」は11分近くある大作であるが、ずっと息をつく暇もないほどの緊張感が漂っており長さを一切感じさせず飽きさせない展開と構成で、あっという間の時間を過ごすことは間違いない。トリプルギターによる3次元的なサウンドが生み出す儚さと力強さに溢れている珠玉の作品。

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9.1/10.0