ユンボにまたがって

聴いた音楽の感想等々

Storm of Void 「War Inside You」

bluebeardNAHT、TURTLE ISLANDなどで活躍をしてきた8弦ギターを操るGeorge Bodmanと、激情系ポストハードコア・バンドenvyのドラマーDairoku Sekiの2名から成る、STORM OF VOIDの2017年発表の1stアルバム。

 

先行リリースされていた一曲目の「Into The Circle」から轟き、うねる極悪リフで始まる。兎に角ヘヴィなサウンドで鼓膜のみならず脳ミソも揺らしてくるほどの重厚なサウンドである。「Silent Eyes」でみせる極悪超重低音からのアルペジオなど緩急のつけ方も巧みである。しかもただヘヴィなだけでなく、「Ghost of Mt. Sleepwalker」などでは郷愁的なメロディを奏でている。「Big River Man」では奇妙なエフェクティブなサウンドのギターが異彩を放っている。また全編にわたってドラムも激しく、かつ複雑なプログレッシブなドラムである。インストバンドであるがゲストボーカルを迎え、「Bow and Scrape」ではNapalm Deathのマーク・バーニー・グリーンウェイ、「War Inside You」ではJaw Boxなどで活躍したJ・ロビンズが参加している。この二曲がインストがメインのこのアルバムのアクセントになっている。ストーナーやらスラッジやらを混ぜて煮詰めたリフにはオリジナルのヘヴィネスがあり、激情ハードコア由来のアグレッシブなリズムや予想もつかないアグレッシブな展開が魅力的。他を寄せ付けない圧倒的なで聴き手をヘヴィネスの深淵に引き摺り込む会心のアルバム。

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8.6/10.0

tricot 「3」

顔面朝勃ち女(詳しくは中島イッキュウのツイート)がメンバーにいるtricotの2017年発表の3作目。

 

スネアが力強いイントロで推進力を持って始まる「Tokyo Vampire Hotel」で幕を開ける。変拍子を多用しているもののメロディはポップで「WABI-SABI」ではエモーショナルなメロディと歌声が印象的である。「よそいき」ではボーカルを代わる代わるやっているようである。そしてNirvanaの「Lithium」のような歌詞の無いポップなサビが印象的な曲である。またどこかチャットモンチーのような雰囲気を纏った「スキマ」といった儚さが漂う曲や「ポークジンジャー」といった言葉遊びの曲もある。あからさまな変拍子は以前よりは抑え気味ではあるが「18,19」のように一聴しただけでは把握しきれないほどのかなり複雑な曲や「南無」のようになんだか頭がおかしくなりそうな曲もある。いかにもガールズバンドのような曲だったり全体的にポップさはあるものの、それでもわけのわからなさは失っていない一筋縄ではいかないアルバムである。

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8.0/10.0

Foo Fighters 「Concrete and Gold」

キーボードのラミ・ジャフィーが正式メンバーとして加入しておよそ3年ぶり、通算9作目となるアルバム。

 

ロック界の良心ことデイヴ・グロールが率いるFoo Fightersの新譜。オープナーの「T-Shirt」でゆったりと幕を開ける今作。すぐさま先行リリースされていた「Run」が始まり一気に逞しく聴き手のハートを掴みにかかってくる。シャウトしながら歌うデイヴの声は勇ましく、走り出すきっかけ、物事を始めるきっかけになるような気がしてくる。また「The Sky Is A Neighborhood」はミドルテンポでコーラスの声が印象的で、シンプルな構成のエモーショナルな曲である。「La Dee Da」は遅めのテンポの部分と推進力に溢れたパンキッシュな部分とがある。パンキッシュな部分はFFらしさを感じられる。また「Sunday Rain」ではポール・マッカートニーがドラムを叩いており、リードボーカルはテイラー・ホーキンズが歌うロックンロールな楽曲である。また「The Line」は朗らかなメロディで『涙で溢れていてもいつか乾くんだ』と力強いメッセージが伝わってくる。そしてクローザーの表題曲の「Concrete and Gold」は巷でPink FloydThe Beatlesのサージェント〜〜のようだと言われているように荘厳でしかもFFらしくラウドな楽曲になっている。Wasting Lightなどのような推進力に富んだアルバムではないけれどもミドルテンポで確実にメッセージを聴き手に訴えかけてくるアルバムである。特に「The Line」の『《俺たちは命がけで戦う/だって今度こそ/すべてが危険にさらされているから》(“The Line”訳詞)(ロッキンオンより)』といった歌詞からも現状を憂う様子が感じられる。「T-Shirt」では『王様になんかなりたくない。ラヴソングを歌っていたいんだ』とデイヴの心情を吐露しているような、バンドマンであり続ける決意ともとれるような歌詞である。聴けば聴くほど厚みと円熟味があることがわかる、FFの決意を感じられるアルバムである。

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7.9/10.0

Tera Melos 「Trash Generator」

カリフォルニアの3人組による5枚目のアルバム。

 

みんな大好きBattlesなどと同じくマスロックバンドと言われている。終始一貫した不穏なベースリフで始まりお経のような歌が入ってくる「System Preferences」で幕を開けるこのアルバム。変態的テクニカルな曲である表題曲の「Trash Generator」はポップなメロディと変態的リフと拍子が詰まっている。一方で「Warpless Run」では変態ギターソロとハードコアの要素が感じられるような疾走感のあるそれなりにシンプルな前半とそこから展開して疾走感を感じない不思議な展開へと持っていく。電子音から幕を開けて後半これまた摩訶不思議な展開を見せメインのサビに戻る「A Universal Gong」といったプログレッシブな強烈だが5分とコンパクトにまとまっている。複雑なギターのリフや蠢くベース、そしてギターソロは飛び道具を使いまくる変態ギターとジェットコースターのような予想外のプログレッシブな曲の展開で脳を揺さぶってくる。3人組とは思えない1枚。

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7.0/10.0

Prophets of Rage 「Prophets of Rage」

RATMの楽器陣、Public Enemy、そしてCypress Hillらによるスーパーグループによるデビューアルバム。

 

 RATMではザック・デ・ラ・ロッチャ、Audioslaveでは亡きクリス・コーネルといった強烈なボーカルと今までやってきた彼らRATMの楽器陣が今回はヒップホップ界のスターらを迎えてバンドを組み、そのデビューアルバムという強烈なデビューアルバム。RATMの楽器陣はいつも通りのヘヴィな演奏である。モレロの変態ギターやティムの図太いベースの音、ブラッドウィルクのシンプルで力強いドラムは未だ衰えることを知らないようだ。ただヒップホップ色が強いボーカルなのでその軽快さを生かすためかギターリフもRATMやAudioslaveほど単純明解でヘヴィな曲中にずっと這い回るようなものではなく、軽やかなギターリフが多いように思える。特に「Take Me Higher」はジョン・フルシアンテ期のRHCPのような曲でそれまでのモレロ像とは異なるものである。しかし「Radical Eye」のイントロやギターソロのワーミーはいつも通り変態である。「Unfuck the World」のイントロやメインリフ、変態ギターソロはRATMを彷彿とさせるものの、ヒップホップ寄りなためRATMやAudioslaveのようなヘヴィさを期待して聴くと肩透かしを食らうかもしれない。今まで同様、もしくはそれ以上のアティチュードで、現代社会が抱えている問題やアメリカ自身の問題などに対しての怒りの歌であることは間違いない。ギターソロは間違いなく一貫した変態トムモレロである。ジャケットの如く拳を高々と突き上げたくなる一枚。

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6.9/10.0

At The Drive-In 「in•ter a•li•a」

2017年発表の17年振り4枚目のフルアルバム。

 

オリジナルメンバーのジム・ワードが脱退し新メンバーのキーリー・デイヴィスが加入したアルバム。初っ端から終わりまで一貫してハイスピード・ハイテンションで突っ走っていく。ボーカルは喚きまくり、まるで互いに戦っているかの如く二本のギターは暴れ絡み合い、ベースはうねり、ドラムは騒々しい。ただのポストハードコアな楽曲ではなく「Hostage Stamps」では少し引っかかりのある曲となっている。全体的にエモというよりはパンクに寄っていった印象がある。ただ全体を通して平らな印象があり、頭一つ飛び出た一撃必殺のリフやメロディや荒々しさだったり泥臭さが少ないようにも思える。良くも悪くもとっ散らかっておらず、前作のようなバラエティに富んだものではなく綺麗に纏まっている感じがある。前作がジェットコースターのように予想外な動きを見せるアルバムだとすると今作はゴーカートのように安定してハイスピードで突撃していく印象である。シンプルにひたすらに勢いで猪突猛進するATDIのハードコア・パンク的なアルバム。

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7.9/10.0

MONOEYES 「Dim The Lights」

2017年発表の2枚目のフルアルバム。

 

「Leaving Without Us」の爽やかなアルペジオで始まる。「Free Throw」はポップパンクな軽快でメリハリのある、そしてどこか寂しいような仕上がりとなっている。このアルバムではベースのスコットマーフィーがリードボーカルを務める「Roxette」と「Borders &Wall」、「Carry Your Touch」も収録されている。3曲ともパンク特有のスピード感と推進力に溢れた元気一杯のパワーポップのような楽曲である。クローザーの「3, 2, 1 Go」はまさしくエンディングに相応しい切ないメロディと力強いサビがかっこいい。全体を通して軽やかさ、爽やかさを感じる作品で涼しげな印象を持ちながら聴きてを揺さぶり背中を押してくれるメロディと歌詞が溢れている。アルバム全体を通して若干落ち着いた暗い雰囲気があるが、そのなかでスコットが作曲した楽曲が華やかな明るさの彩りを与えている。ELLEGARDENの延長っぽさがあった前作よりはthe HIATUSの雰囲気をパワーポップメロコアにしたようなアルバムだと思う。

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7.7/10.0