ユンボにまたがって

聴いた音楽の感想等々

Nepenthes 「Confusion」

日本のドゥームメタルバンドによる2017年発表の2枚目のアルバム。

 

元Church of MiseryのボーカルであるNegishiが中心となって率いるスーパードゥームメタルバンドである。ズッシリとした重たさのあるブルージーなリフやハードロックのようなリフなど重量級なリフが殴りかかってくる。またボーカルもやさぐれたダミ声が野蛮さと攻撃性を増している。また歌詞は日本語を中心としており、しかも古風な言い回しがトリップ感を強めている。1曲目の「Down in Your Funeral」は初っ端からフィードバックノイズで始まり、途中同じリフをずっと弾いたりするなどドゥーム、ストーナー感がバリバリ全面に出てきている。またギターソロもブルージーなソロで心地よい。一方で2曲目の「Burned and Buried」ではMotörheadのような重いのに疾走感のある前に倒れそうな勢いがある曲となっている。3曲目の「Reflections」はハードロックなリフなのだがどこか和の要素があり人間椅子のような感じがあるものの、ストーナー感は失われていない。4曲目の「Parallax」は重くうねりながら地を這うリフとボーカルが終始続く。5曲目の「Troubled Evocation」は猪突猛進していくアップテンポなハードコア・パンクな印象の疾走感のある曲である。そしてクローザーの「World Deceased」はオープナーと同様長尺のドゥーミーな遅く重い楽曲となっている。どの楽曲もライブで映えることは間違いないようなキラーチューン揃いのアルバムである。

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8.6/10.0

Code Orange 「Forever」

2008年結成、アメリカのメタリックなハードコアバンドによる2017年発表の3枚目のアルバム。

 

ただのハードコアではなく、ドゥームやスラッジ的な遅さも取り入れているのが特徴的である。またズンズンと低い重量のあるブリッジミュートのリフが凄まじい。走っていたと思ったら急に止まる。急に這いつくばって蠢き、そしておもむろに走り始めるといったのが繰り返されるとも言えるアルバムである。また曲間の不穏な音などただ実験的なだけでなくメリハリをつける役割を果たしている。アルバムでも暴力的な楽曲が続いたなかでメロディはポップな「Bleeding in the Blur」を挟んでアクセントとしている感じがある。ただメロディがポップというだけで低音の弦楽器と激しいドラムは変わらない。またNINのような不穏な電子音をハードコアに落とし込んだかのような「The Mud」といった曲もあり幅の広さがあるようである。また「Ugly」では生ぬるいようなイントロと気だるいメロディとサビでのポップさがグランジのようであり、ただのハードコアバンドではなく一筋縄ではいかないバンドであることがわかる。全体的に見ればメロディを放棄したような歌ばかりであるが、それぞれリズム工夫が施されておりそれぞれの楽曲が際立っている良作。そしてCode Orange is Foreverというまっすぐな歌詞もいい。

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7.5/10.0

Full of Hell 「Trumpeting Ecstasy」

ノイズやスラッジをも内包しているアメリカのグラインドコアバンドの2017年発表の3作目。

 

MerzbowやThe Bodyともコラボレーション作を発表している彼らであるためノイズ要素、実験要素が強めなのではないかと思うところがあるが、今作ではグラインドコアの爆速で冷徹なわずか2分前後の楽曲を中心にして駆け抜けていく。アルバムに収録されている楽曲数は11曲であるがトータルの時間はわずかおよそ23分という短時間であることからもグラインドコアの教科書のようである。極悪なブラストビートやノイズギリギリのギターサウンドでザクザクと刻むリフが凄まじく、冒頭の3曲はまとめて1曲のような破壊力のある暴力装置である。全体的に曲の初っ端から聴き手のことを一瞬で殺しにかかってくるような姿勢の楽曲で占められている。また不穏な声の入りから曲を始めたり、曲の中盤テンポダウンしてスラッジなリフを弾くなどアプローチの仕方も様々である。表題曲の「Trumpeting Ecstasy」ではノイズの中に浮かび上がる女性ボーカルがこの世のものとは思えない不気味さを醸し出し、それに加えて破壊的な展開がこのバンドの得意でもあり特異なところなのだろう。

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7.5/10.0

Glassjaw 「Material Control」

NYのロングアイランド出身で1993年から活動しているポストハードコアバンドによる15年ぶりの3枚目のアルバム。

 

直前でのリークがなければサプライズ発売となった今作は全曲でTDEPのドラマーがドラムを叩いている。ポストハードコアと言われてはいるがカオスさが垣間見れ、特にギターは縦横無尽に暴れ、ノイズやノイズの一歩手前のような狂気的な演奏が印象的である。ベースは図太く歪んだ音でうねり存在感をこれでもかと発揮している。ドラムは言わずもがな激しく力強い。ボーカルも歌ったり叫んだりと楽器隊の狂気に負けじと狂っている。アルバムの1曲目の「new white extremity」からエンジン全開で狂っている。それでいてポップなメロディがノイズの突風の中でところどころで垣間見れる。息つく間もなく次の曲次の曲へと進む推進力が凄まじい。「shira」ではノイジーなギターソロやポリリズム的なリフが冴え、そこから雪崩れ込むように「citizen」へと続く。また「strange hour」は激しくはなく、歌を聴かせるタイプの楽曲である一方で絶妙なリズムのベースがトリップ感を生み出している。一方で「closer」では疾走感のあるハードコアなスピードに溢れたビートの曲で幅の広さを感じる。民族音楽を思い起こさせるような打楽器のリズムや2つの楽曲で1つの楽曲となっている構成の楽曲など前衛的な姿勢が感じられる。ただトチ狂ったかのような楽曲はなく、どちらかと言えば落ち着いた感じで大人になったイメージがある。

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7.1/10.0

Spotlights 「Seismic」

ニューヨークの夫婦による2017年発表のアルバム。

 

Mogwaiの如く分厚い音の壁を構築しているような感じである。ただうねるような低音のギターやアグレッシブなドラムからポストメタルのような雰囲気が感じられる。ただボーカルはIsisなどと違って普通の歌声である。オープニングはアルバムタイトルと同名の「Seismic」で、浮遊感のある始まりから急激にメタリックなサウンドへと変貌する。轟音の中で単一リフの如く繰り返されるボーカルがさらなる浮遊感をもたらしている。そして間断なく次の「Learn to Breathe」へと繋がる。シューゲイザーのように轟音の中でゆったりとしたメロディが流れるがドラムはパワフルで弦楽器の音も非常に重たい。またリフも地を這うようなものである。この中で歌われるメロディが楽器隊と上手く対比されるような関係で非常に浮遊感のあるものとなっている。更に間断なく次の「The Size of the Planet」そして「Ghost of a Growing Forest」へと一曲のように繋がるようすはまるでプログレのようである。「What is This? Where Are We?」ではメリハリのある展開がある良曲である。ポストメタルとシューゲイザーを融合したようなアルバムとなっており全般轟音といったアルバムである。ただ全体で約64分もあり、同じ雰囲気がずっと続くため後半になると疲れてきてしまった。

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7.2/10.0

Amenra 「Mass VI」

1999年結成、ベルギーのコルトレイク産激情系ポストメタルバンドの6枚目のアルバム。

 

Isisのアーロン・ターナーはポストメタルを「thinking man's metal」と形容したがまさしく今作は思考する人間のメタルである。ひたすら真っ暗闇で前が見えないような音と悲痛なボーカルの叫びのような歌声が更に黒を黒たらしめている。今作のオープニングを飾る「Children of the Eye」は物静かな暗闇を想起させる暗いイントロが2分近く続いた後、一気にボーカルとギター、ベース、ドラムが爆発するように入ってくる。重厚なサウンドと同じリフを繰り返すのであるがそこから展開し、一筋の光がさすような優しい声のパートが一瞬ある。しかしそれすらも覆い尽くすほどの暗黒な演奏がまた始まる。初っ端から10分近くある長尺な曲であるが一瞬たりともダレることはない。「Plus Près de Toi」も長尺な曲ではあるが静と動があり、あっという間に終わってしまうような感覚がある。なんと言っても「A Solitary Reign」は優しく語りかけるボーカルとそのバックで轟音を奏でている楽器隊とそれとともに渦巻きながらリフの一部と化したかのような絶叫が印象的な珠玉の作品である。そしてクローザーの「Diaken」は11分超の楽曲である。これもまた激情的なボーカルとポストロック、ポストメタルのような音の壁が出現する楽曲である。決して疾走感があるわけではなく、どちらかと言えば遅さ、重さに比重があり、ノロノロと進んでいくのであるが痛みを表現した圧倒的な空気感に飲まれ一瞬のうちに全曲聴き通してしまうほどの熱量がある。約40分が一瞬にして過ぎ去る怪作。

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8.9/10.0

Veil Of Maya 「False Idol」

イリノイ出身の4人組による2年ぶりの6作目。

 

低音で激しくかつ複雑なリフと構成が特徴であるDjentシーンで活躍するVoMであるが今作でも健在である。短い導入部を終えて初っ端の3曲から激しく複雑なリフで畳み掛ける。その激しさの一方でクリーンボイスではPeripheryがみせたようなエモ的なメロディが目立っており、エモ・スクリーモへのアプローチが見てとれる。また、「Pool Spray」ではスラッジ的な遅さと重さがある始まりから爽やかさがあるサビへと移行していく前衛的な曲なのだが不自然さがない巧みな楽曲である。また「Manichee」ではザクザクとした刻みや激しく複雑なドラムであるがボーカルは始めから終わりまでクリーンで歌うという完全にエモへのアプローチがみられる。全体的にボーカルのクリーンパートのメロディがシンガロングできるくらいポップかつ郷愁的なところがかなりある。後半ではマシンガンのような高速ドラムと激しいスクリームが聴ける「Follow Me」といった極悪な楽曲も揃っている。後半の「Follow Me」「Tyrant」「Livestorm」の凶悪なボーカルと激しい楽器隊の演奏が楽しめる。序盤はDjentとエモの間くらい、中盤ではエモ、後半は激しさが強めとアルバム全体で激しい楽曲と落ち着いた楽曲と緩急がつけてあって流れができていてぶっ通して聴ける。

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7.4/10.0